おもうこと

ふつうの20代ってこんなかんじ

ともだち①

妹が生まれた頃、引っ越している。

前の家では母のママ友の集まりによく行っていて

その頃は自覚はなかったけど、お友達がたくさんいた。

 

引っ越してから、公園に行ってもあまり誰かといた記憶がない。

母と公園に行って、知らない子を「おともだち」と呼んで

追っかけていた記憶。

 

相手は大体年上の子で、子供だけで数人で遊んでたような感じ

だったからたぶん小学生くらいの子。

そりゃ知らない年下の子に突然「おともだちー!」と話しかけられたら

逃げるだろうけど、なんでかわからなくて、よくその子たちが走っていった

背中に「おともだちー!」と叫んだ。

 

新しい家の近所は、父の知り合いの人がいて

しばらくしてその子供たちとよく遊ぶようになった。

あんまり同い年の子がいなくて、大体上か下の子がおともだちだった。

 

一番強い記憶は、妹があかちゃんの頃。

近所のおねえちゃんが妹をだっこしたがって、

母が抱かせようとしたら手を引いて、落とした。

 

母は大きな声を出して、妹は火が付いたように泣いた。

気づいたら車に乗って病院に行って、先生が妹の頭に

ホチキスを刺した。

 

怖くて、なぜかあたしも痛かった。

その近所のおねえちゃんとは遊ぶ機会が減った。

 

いもうと

2歳の時、妹が生まれた。

その小さな存在がよくわからなかった。

泣くから怖かったけど可愛かった。

触りたくて、なにかしてあげたくてずっと見てた。

 

この頃から、父と出かけることが多くなった。

母は、妹につきっきりだった。よくわからなかった。

 

「妹」がよくわからなくて、母がしばらく帰ってこなかったときに、病院に行った。

寒い廊下で、ガラス張りの向こう側にあかちゃんがたくさんいた。

たまに父や母が緑色のエプロンをつけてあかちゃんを見せてくれた。

もちろん、幼いあたしに「姉」になった自覚もなければ

そのあかちゃんが家族である認識もない。

緑色の丸椅子にしまじろうを座らせて、知らない人と話す父を待った。

丸椅子の真ん中に穴が開いていて、しまじろうがちゃんと座れないのが嫌だった。

 

しばらくして、母が家に帰ってきたけどあかちゃんはいなかった。

そこからまたしばらくして、あかちゃんが来た。

みんなから口々に「おねえちゃんだね」と言われたことを覚えている。

おねえちゃんは偉いんだ。と思って、誇らしかった。

たぶんそこで姉である自覚が生まれたのかな。

 

父も母も祖母もみんな、妹を見ていた。

あたしのことも見てほしくて、妹が寝ていたベビーベッドに

無理やり入り込んだら妹は泣いた。

だけどみんなが笑ったから、嬉しかった。

 

母と話したくて、こっちに来てほしくて色々した。

何かするたびに「ちょっと待って」「あとでね」と言われたが

「ちょっと」や「あとで」がよくわからなかった。

あたしの中でそれは今この瞬間だったから、母に言われると

「もう『ちょっと』になったよ!」とか、「『あとで』になったよ!」と

言っていたことを覚えている。

 

おねえちゃんになってから、あたしが泣いたりわがままを言うと

大人たちから怒られるようになった。

電気を消した部屋に閉じ込められたり、ベランダに出されることが多くなった。

父は「ナタで足を切るぞ!」とよく言ってた。

ナタがよくわからなかったけど、足を切るのが恐ろしくてよく夢に見た。

祖母は「泣くなら帰る」とよく言った。

泣き止まないと会えなくなると思って怖くてもっと泣いた。

 

今思えば、ただ単純に寂しかった。

そして悲しいことに、そんな寂しいもどかしい記憶が強くて

楽しかったことの記憶がなんとなくもない。

写真やビデオを見返せば絶対あるはずなんだけど。

うまれたとき

おかあさんといっしょ」のおねえさんとおにいさんが

あゆみおねえさんとけんたろうおにいさんの時代。

 

あたしの上に本当は姉か兄がいたらしい。

よくあるはなし。

 

お堅い両親のもと、親戚中でひとりめの子供として生まれた。

全く覚えていないが、親戚中にお披露目があったらしい。

小学生くらいの頃まで、全然知らないおじさんやおばさんに

「大きくなったね」と言われるのが恥ずかしかった。

 

両親はこの頃の話をすると、「本当に大変だった」と様々な逸話を教えてくれる。

寝つきが悪く夜泣きが酷くて、よく夜中にドライブに行ったこと。

朝起きると布団で寝ていたはずのあたしがいなくなっていて

大焦りで探すと、カーテンの裏まで移動していたこと。

ディズニーランドにお泊りに行って、ふうせんが欲しいと大暴れして

買ってあげたのに、翌朝には興味をなくしていたこと。

 

ふうせんのことは何となく覚えている。

しぼんで床にへたっているふうせんがつまらなかった。

 

ちゅっちゅ(各家庭で呼び方は変わるけど)がしばらく手放せなかった。

いくつのときかわからないけど、突然ベランダの隙間から投げ捨てたらしい。

そこからぱったり、欲しがらなくなった。

なんとなく、落ちていった光景を覚えている。

あいつはいなくなったんだ。みたいな、さっぱりした気持ちだったような。

 

両親は「大変だった」と言うけど、楽しそうな寂しそうな

何とも言えない表情や空気で話してくれる。

 

写真やビデオを見返すと、「無垢」という言葉がぴったりな

幸せそうな時間が、なんというか、不思議に感じる。

特段興味はないんだけど、自分の記憶にない自分が不思議。

まえがき

あっという間に20代後半に差し掛かった。

 

周りはバタバタ結婚、出産。

うらやましいと思う時期もあった。いや、今も少しは。

結婚したい人もいた。紆余曲折、うまくいかなかった。

 

同年代より少し早く社会に出て、

周りは子供だ。話が合わない。と斜に構える時期もあった。

あたしの努力に全力で応えてくれるのはお金だけだと思ったときもあった。

 

畑違いの職場に転職して、お作法の違いに苦しみ心を病んだこともあった。

自分の弱さを認めたくなかった。あたしは元気だった。のに

心はついてこなかった。

 

思い出せばもともと人付き合いもうまくなかった。

幼稚園の頃からお友達は男の子が多かった。

人との距離感がわからなくて、小学校・中学校は

ひとりでいることが多かった。

人との関わり方がわからなくて、高校は中退した。

 

楽しいことより、後悔や悔しさを感じる瞬間が多かった。

いつまで経っても想像していた大人とは程遠い。

 

そんなあたしの、これまでの話。