うまれたとき
「おかあさんといっしょ」のおねえさんとおにいさんが
あゆみおねえさんとけんたろうおにいさんの時代。
あたしの上に本当は姉か兄がいたらしい。
よくあるはなし。
お堅い両親のもと、親戚中でひとりめの子供として生まれた。
全く覚えていないが、親戚中にお披露目があったらしい。
小学生くらいの頃まで、全然知らないおじさんやおばさんに
「大きくなったね」と言われるのが恥ずかしかった。
両親はこの頃の話をすると、「本当に大変だった」と様々な逸話を教えてくれる。
寝つきが悪く夜泣きが酷くて、よく夜中にドライブに行ったこと。
朝起きると布団で寝ていたはずのあたしがいなくなっていて
大焦りで探すと、カーテンの裏まで移動していたこと。
ディズニーランドにお泊りに行って、ふうせんが欲しいと大暴れして
買ってあげたのに、翌朝には興味をなくしていたこと。
ふうせんのことは何となく覚えている。
しぼんで床にへたっているふうせんがつまらなかった。
ちゅっちゅ(各家庭で呼び方は変わるけど)がしばらく手放せなかった。
いくつのときかわからないけど、突然ベランダの隙間から投げ捨てたらしい。
そこからぱったり、欲しがらなくなった。
なんとなく、落ちていった光景を覚えている。
あいつはいなくなったんだ。みたいな、さっぱりした気持ちだったような。
両親は「大変だった」と言うけど、楽しそうな寂しそうな
何とも言えない表情や空気で話してくれる。
写真やビデオを見返すと、「無垢」という言葉がぴったりな
幸せそうな時間が、なんというか、不思議に感じる。
特段興味はないんだけど、自分の記憶にない自分が不思議。